近年、不動産や建築の分野で「スマートビルディング」という言葉を耳にする機会が増えました。
建物内のあらゆる設備がインターネットに繋がり、自動化される未来像です。
しかし、それを実現するためには、複雑に絡み合うシステムを一つにまとめ上げる強力な存在が欠かせません。
その鍵を握るのが「マスターシステムインテグレーター(Master Systems Integrator、以下MSI)」です。
この記事では、MSIの基礎知識から、従来のSIer(システムインテグレーター)との違い、そして企業やビルオーナーが導入するメリットまでをわかりやすく解説します。
建物のIoT化やスマート化を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
言葉の定義と「オーケストラの指揮者」という役割
マスターシステムインテグレーター(MSI)とは、スマートビルディングや大規模施設において、建物内のあらゆるシステム(ITネットワークや物理的な設備)を統合し、一元的に管理・連携できるように設計・構築・運用を統括する専門家や企業を指します。
オーケストラに例えると非常にわかりやすくなります。
個々の楽器(空調、照明、セキュリティカメラなど)がどれほど優れていても、それぞれがバラバラに演奏していては美しい音楽にはなりません。全体が調和して一つの音楽を奏でるように全体をまとめる「指揮者」こそが、MSIの役割です。
一般的なSIer(システムインテグレーター)との決定的な違い
「システムを統合する」と聞くと、既存のSIerを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、両者には明確な違いがあります。
IT(情報技術)とOT(運用技術)をまたぐ全体最適
主に企業のIT(情報技術)システムの構築を専門とします。
社内ネットワーク、クラウド構築、基幹業務システムなどのデジタル空間の統合がメインです。
IT領域に加えて、OT(Operational Technology=運用技術)と呼ばれる物理空間のハードウェア(空調、エレベーター、配電、センサーなど)の制御も含めた「全体統合」を専門とします。
つまり、MSIはデジタルの世界(ソフトウェア)と物理的な空間(建物の設備)をシームレスに繋ぐ、より広範で特殊な専門知識が求められるポジションだと言えます。